i3 版 Ubuntu 、Regolith Linux を使うことのメモ

簡単かつ安定的に i3 Window Manager をセットアップ

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メジャーで安定した Ubuntu に i3 ウィンドウマネージャーのパッケージをインストールすれば、ユーザーフレンドリーな i3 環境が実現できるかもしれない。ただし、バランスのとれた設定やライブラリ追加などはなかなか骨の折れる作業である。

だったら、 i3 インターフェースの Ubuntu フレーバーがあったっていいだろう、そう思う向きは少なくなかったに違いない。

そこで待望の Ubuntu 派生 i3 デスクトップ・ディストリビューション「 Regolith Linux 」の登場とあいなった。

最新の Ubuntu Linux をベースに、主たるインターフェースとして i3 のフォークである i3-gaps を採用してリーズナブルにまとめ上げられている。

ベースとなる Ubuntu は GNOME3 を採用し始めた 18.04 以降のものとなるので、スタンダードで安定的なコンフィギュレーションが期待できる。アピアランスも華美へと走ること無く、今やカラーテーマの一大スタンダードとなった Solarized を採用している。

私は Ubuntu + i3 と聞いて早速インストールを始めてしまったので、簡単な使い方やちょっとした工夫などもあわせて、かようにまとめてみた。

Regolith Linux とは

タイル型ウィンドウマネージャー「i3」

Regolith Linux は Regolith Desktop をデフォルトのデスクトップ環境とする Ubuntu ベースのディストリビューションである。 Regolith Desktop は主たるインターフェースに i3 タイル型ウィンドウマネージャー を採用している。

GNOMEKDE あるいは MacOS や Windows のように、ウィンドウを自由に変形させドラッグして一部を重ねたりできるようなタイプをスタック型ウィンドウマネージャーなどと呼ぶが、その対極にあるようなインターフェースを持つのがタイル型ウィンドウマネージャーである。その名の通りウィンドウをタイリング配置して表示するもので、ウィンドウの一部を重ねられるような自由度は、基本的には持たない。高度な処理を行わない分軽量で動作も軽快である。その歴史はスタック型よりも長い。

タイル型の著名なものに dwm があり、それから xmonadawesome などが派生した。また dwm とは少々異なり、スタック型の要素を一部実用的に取り入れたものに wmii があるが、これにインスパイアされる形で誕生したのが i3 である。

i3 に限らず、タイル型ウィンドウマネージャーの魅力は、素早い操作が期待できるリーズナブルなインターフェースと軽量なプロセス、キーバインディングをはじめとする自在なカスタマイズ性であろう。また、多くをユーザーの知恵と工夫に依存すること自体がコアなユーザーの目には魅力的に映るようである。

それらに加え、 i3 の特長として次のことが挙げられる。

  • 全てが設定可能でありながら設定ファイルの記述が難しくない
  • ユーザーガイドなどドキュメント類の完備
  • フローティングウィンドウモード
  • 比較的ビギナーに扱いやすい

i3 ではキーバインディングやウィンドウの配置など非常に多岐に渡る設定が可能であり、その動作はユーザー次第である。しかしながら設定ファイルはプレーンなテキストのシンプルな記法によるもので、高度な開発言語を新しく学ぶ必要はない。

それらの機能や設定を網羅した ユーザーガイドやFAQなどのドキュメント は常にアップデートされており、記述例がふんだんに示されたわかりやすいものとなっている。

特徴的なフローティングウィンドウモードは、格子からウィンドウを外し、タイリングウィンドウやデスクトップの上へ浮くように配置して、移動や変形ができるようにするものである(タイリングウィンドウの下には配置されない)。これはスタック型の機能を一部採り入れることによって得た機能であり、 i3 の柔軟なデザイン思想が伺える。

また、 i3 のセットアップ直後の設定はとても妥当なもので、ビギナーにとって扱いやすい挙動を示す。いかようにでもカスタマイズできるからといって、最初からユーザーに多くを要求することは導入の障壁に成りうるだろう。 i3 のデフォルトはそこまで素っ気ないものでは無いのだ。

ほかにも、タブ&スタッキング構成、 RandR ( Resize and Rotate )サポート、マルチモニター、といった機能が導入メリットとして語られる。また、その健全な開発プロセスは i3 が信頼される所以である。

さて、 i3 ウィンドウマネージャーの導入は、 i3 パッケージをインストールするか、あるいは i3 をデスクトップもしくはオプションの一つとする Linux ディストリビューション(ディストロ)をセットアップすることによる。

前者は飽くまで素の i3 の導入であり、デザインや操作性においての調和は各ユーザーがカスタマイズによって実現しなければならない。そこで後者のような高度にカスタマイズされた i3 デスクトップの登場とあいなったわけだが、これまでは何れもが Arch Linux ベースのディストロによるものであった。

だからもっとメジャーでユーザーフレンドリーなものをベースに、 i3 をまとめ込んだデスクトップを待望する向きは、少なくなかったはずである。

Arch Linux はだめなんだとかそういうことを言っているんではない。ディストロには各々理念があって、それが図らずもユーザーの目的に沿わないことは、自由を標榜する世界なら常に起き得るだろう。そして、より普遍的で安定的なものを多数派が欲しているのが実状かも知れない、ということに過ぎないのだ。

そうして待ち望まれていたものがいよいよ登場した、というわけである。

なお、 Regolith に採用されているのは i3 そのものではなく、ヴィジュアル面での機能が拡張されてフォークした i3-gaps である。ウィンドウ間にギャップ、つまり隙間をつくってタイル型配置特有の圧迫感を減らし、ウィンドウの認識を高める工夫がなされている。

待ち望まれたディストリビューション

Regolith Linux は3大要素による相乗効果を謳っている。すなわち、

  • Ubuntu のメジャー性
  • 効率的で生産性の高い i3 インターフェース
  • GNOME の特徴的なシステム設定機構

ディストロ自体はローンチ後まだ間がなく、できたてである。実際 DistroWatch.com で Waiting List に登録されたのは、HackerNewsで取り上げられた2019年4月だ。ただし、Regolith Desktop はそれよりもまえから開発が続けられてきたもののようである。

見た目はまさに質実剛健、アイコンもメニューもなく、ドックや目を引くウィジェットも存在しない。パネルとおぼしきは下端にある1本の小さなバーのみである。

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Regolith Desktop はその構成要素として i3-gaps を中心に Rofi 、 Compton 、 Conky といった i3 ユーザーにはおなじみのプロジェクトを採用している。カラーテーマには Solarized を用い、端末メインでの利用に耐えうるようプライマリーなフォントとして Adobe Source Code Pro を加えている。

また、バックボーンとして GNOME Flashback ( GNOME シェルのひとつ)が安定的なシステムマネージメントの実現に一役買っている。この事には賛否あるかも知れないが、 Ubuntu の安定的なシステムコンフィギュレーションはなかなか得難いソリューションである。結果としてユーザーフレンドリーな i3 環境を作り上げている。それは例えば Wi-Fi や Bluetooth 、マルチモニターの設定、外部ストレージのマウントも含めたファイル管理機能といったものを提供し、ユーザビリティに貢献している。

最終的にこれらの組み合わせは実にうまく、ミニマルにまとめあげられている。それはつまり Regolith Desktop のアプローチは華美にあらず行き過ぎないカスタマイズであって、ユーザーによる拡張作業やそのアイディアを阻害しないものと言えるだろう。

Regolith Linux のセットアップ

Regolith Linux をセットアップする方法は主に2つ。

ひとつはディストリビューションのインストールである。つまり Regolith Linux 公式の ISO イメージから作成したインストールメディアを使ってOSをインストールするのである。このインストーラーは Ubuntu のものとほぼ同じで、日本語にも対応している。

もうひとつの方法はデスクトップ環境(DE)のインストールである。あらかじめセットアップしてある Ubuntu に Regolith デスクトップ環境をインストールするもので、 Ubuntu のパッケージマネージャで regolith-desktop パッケージをインストールすることによる。

regolith-desktop は Ubuntu 18.04 以降に対応している。また 2020年2月現在(本稿追記時)、ディストロのインストールイメージは Ubuntu 18.04 版と 19.10 版の2種類が存在する。

当たり前だが何れの方法においてもベースとなる Ubuntu リリースを選択することになるから、ここで簡易的にではあるが Ubuntu のリリースバージョンについて触れたい。

Ubuntu Linux は毎年4月と10月にニューバージョンがリリースされる。このうち2年に1度の4月にリリースされるものは LTS と呼ばれる長期サポート版(Long Term Support)で、他のリリースは Interim release と呼ばれる暫定版である。 LTS がリリースされる合間に暫定版が3回リリースされるということになる。

LTS/暫定版とも常に何れの最新版へもアップグレード可能だが、両者の違いはその名の通りサポート期間にある。2013年以降の実績で LTS は5年間、暫定版は9ヶ月間サポートされており、今後も同様の予定である。

普通に安定利用したいということであれば 2〜5年に1度のアップグレードで LTS を使い続けることが考えられる。また OS やパッケージに対し常に新しい機能を望むならば半年に1度リリースされる最新版へ、継続的にアップグレードを行うということになるだろう。

現在 Regolith の ISO イメージに使われているリリースを具体的に記すと、Ubuntu 18.04 は 2018年4月にリリースされた LTS で、2023年4月まで無償サポートが保証されている。また Ubuntu 19.10 は2019年10月にリリースされた暫定版であり、これのサポート期限は2020年7月である。その頃までには 20.04 がリリースされており、これは LTS 最新版となる予定である。

なお、 Ubuntu 18.04 には ESM (Extended Security Maintenance)という延長セキュリティが用意されており、 2028年4月まで保証される。 Ubuntu Advantage というサービス(企業向けでは有償)を受けている場合には無償でこの ESM サポートが受けられるという。

Ubuntuのリリースサイクルについては Ubuntu release cycle | Ubuntu に詳細があり、そこではインストールされた Ubuntu の95%が LTS であると推定している。

Regolith Linux ディストリビューションをインストールする方法

Regolith Linux の ISO イメージは以下からダウンロードできる。

仮想マシンのゲストとしてではなく、実際にPCへインストールしてブートできるようにするには ISO イメージを焼き込んだインストールメディアが必要である。

Regolith Linux の ISO イメージは Ubuntu のそれをもとにしており 2GB を超える。従って CD-ROM は使えず、光学メディアなら DVD を選択することになるだろう。焼き方については Ubuntu Japanese の Tips 集に記載があるようだ。

しかし、昨今の PC は USB メモリからブートでき、その USB メモリの価格もとても安くなっている。加えて光学ドライブを搭載しない PC が増えている状況でもあり、そうなると USB メモリでのインストールが最も手軽な手段と言えるかもしれない。

起動可能なUSBメモリを Windows 上で作成するには Rufus や UNetbootin を使うといい。

また、 Linux 上でなら dd コマンドで確実なものが作成できる。

嫌なことにならないようあらかじめ fdisk あるいは lsblk でデバイスをしっかり確認する。

$ sudo fdisk -l
$ lsblk -fd

確認したら、ダウンロードした ISO イメージファイルを USB メモリーに書き込む。以下は USB メモリーが /dev/sdb である場合のコマンドライン。

$ sudo dd if=/home/jenny/Downloads/regolith-19.04.0-2019.05.26-desktop-amd64.iso of=/dev/sdb bs=4M
$ sync

if= オプションでイメージファイルを指定し、 of= で書き出す先を指定する。 bs= で一度の読み書きサイズを指定でき、上では早く終えるよう 4M を指定しているが、これはなくてもいい。実行後、さらに sync コマンドでメモリバッファをディスクにフラッシュしておく。

以上で作成した USB メモリーから PC をブートする。

USB ブートは、 PC 起動時の BIOS スプラッシュ画面で特定のキーを押して指定したり、あるいは BIOS 設定で起動優先順位を変えたり、そこはそれぞれのマザーボード仕様によるだろう。

Ubuntu のインストーラーはどんな解説も無意味に思うくらいに隙がなく、とてもよくできたものだ。けれど、せっかくスクリーンショットを撮ってきたので、無理矢理こしらえた解説とともに並べ立ててみる。

起動すると、「Welcome」というタイトルで [ Try Regolith ] か [ Install Regolith ] を選ぶ画面が英語で現れる。同じ画面の左方にあるリストで言語を指定できるので、「日本語」を指定する。このときはリストの一番下の方にあった。

すると以下左のようにインストーラが日本語版に切り替わり「ようこそ」と言われる。 [ Regolith をインストール] をクリックするとさっそく「キーボードレイアウト」を尋ねてくる。私は US-ASCII 配列のキーボードを使っているので [英語US] から選んだが、普通に JIS を使っているなら [日本語] の選択肢から選ぶ。

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(※画像クリックで拡大表示です)

以下の「アップデートと他のソフトウェア」の画面では [通常のインストール] か [最小インストール] を選ぶ。ここでは最小を選んだ。また、オプションとして [インストール中にアップデート] が選べるので、これはやっておいたほうがいいだろう。どうせ後でやることになる。それと、[グラフィックスと…] という項目にチェックをつけておけば、プロプライエタリなグラフィックドライバなどもインストールされるようになるので、ここは適宜検討する。

「インストールの種類」では、ドライブのデータを全部消してインストールするのかどうか、を指定する。 [それ以外] を選べば別の画面になり、パーティションの作成/指定やファイルシステム、フォーマットの指定、ローダーをMBRかPBRどちらに置くかなどなど、細かい指定ができる。ここでは [ディスクを削除してインストール] を選んだ。

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次の画面では「どこに住んでいますか?」と聞かれ、地図上でここでしょう?と言わんばかりに強調表示される。ここで続けざまに「あなたの情報を入力してください」なんて言われたら緊張してしまうのも無理はない。が、要はこのPCでのログイン情報を決めたいのであり、SNSとかGoogleのアカウントなんかを聞き出そうという意図のものではない。

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[あなたの名前] はログイン時やスクリーンロックしたディスプレイマネージャーの画面にいちいち表示されるものである。

[コンピューターの名前] はホストを識別する文字列である。ユニークでさえあればいいのだろうが、愛情を込めて命名したっていい。

[ユーザー名の入力] で決めるのがログインIDで、ホームディレクトリ名にも使われる。長く複雑なものでアイデンティティを主張すると面倒なことになるかもしれないが、そうでもないかもしれない。そこは主義や信条によるだろう。

[パスワード] は長さや入力難易度により評価されてしまう。かなり長いパスワードを設けたつもりなのに「まあまあ」と言われてしまった。このような設問の仕組みには近年とみに遭遇するが、私は誉められたことが1度だけある。

さて、ログイン情報を決めると、「Ubuntuへようこそ」などと、いろいろ言われながらインストールが続行していく。それを眺めながら紅茶でも飲んで一息つくといい。お楽しみはこれからなのだ。もっとも、高スペック、長大帯域、低レイテンシといった富豪環境だったらおちおち茶をすする時間などないかもしれない。環境によって過ごす時間の濃さが違うということなのか。

ともかく、下方に表示されるインジケーターは、ほんのちょっと何かの参考になるかもしれない。

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そうしているうちに完了を知らせるダイアログが現れるので、 [今すぐ再起動する] のボタンを押す。この画面の後で、インストールメディアを抜いて Enter を押すよう促す画面をUbuntuが表示するかもしれない。その支持に従って再起動すれば、インストールは完了である。

ところで、 Ubuntu Live セッション( USBメモリーなどから起動する Ubuntu )の定評あるハードウェア識別能力やわかりやすいインターフェースは、持ち歩いても損のないものだと思う。Gpartedとかの便利ツールも備わっているから、 Ubuntu だけでなく Linux 全般でのトラブル時に重宝する。インストールを終えた USB メモリーは潰さずにペンケースにでも入れておくといいかもしれない。

Regolith Desktop を Ubuntu にインストールする方法

ここではあらかじめ、最新版である Ubuntu 19.04 を「最小構成」でインストールしておいたところへ Regolith Desktop をセットアップしてみた。ただし、 Ubuntu 日本語 Remix である。

Ubuntu は国際化がなされており、ディストロのインストールのところでやったように、日本語版についても簡単に指定できる。

ただし、日本語環境における全ての問題が解決できているわけではなく、例えば Ubuntu が標準とする UTF-8 以外の SJIS や JIS などとやり取りをすると不具合をもたらすことがある。だが、それらへの対応修正は他の言語環境に影響を与えかねず、オリジナルインストーラーに含めることができていない。そのため Ubuntu Japanese Team によって別個に 日本語 Remix という形でパッケージ化されており、日本の Ubuntu サイトではこのパッケージを入れ込んだ公式派生の ISO イメージが配布されている。

ごちゃごちゃと書いてしまったが、ともかくオリジナルの Ubuntu に Regolith Desktop をセットアップするのは Regolith ディストロのセットアップとほとんど変わらないと思い、派生版である Ubuntu Desktop 日本語 Remix でやってみた、ということなんである。

さて、 Regolith Desktop のインストールは、端末エミュレータ( Ctrl+Alt+t )から apt コマンドで regolith-desktop パッケージのインストールを行うだけである。ただし、準備として Regolith の PPA 登録が必要である。

以下のように、リポジトリを付加してデータベースをアップデートし、 Regolith Desktop をインストールする。

$ sudo add-apt-repository -y ppa://kgilmer/regolith-stable
$ sudo apt update
$ sudo apt install regolith-desktop

メタパッケージ regolith-desktop とともに依存パッケージもインストールされる。

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インストールが終了したらログアウトし、ログイン画面で「歯車マーク」をクリック。表示されたリストから “Regolith” を選択してログインする。

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regotlith-desktop のセットアップは以上である。

Regolith Linux をちょっと使ってみる

ログインすると以下のような画面で i3 が立ち上がる。ディストロ名そのものの “レゴリス” な壁紙がランダムに選ばれる( Psiu Puxa Wallpapers からピックアップしたようである)。

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画面右方にキーバインディングのリストが表示されるので、それを見ながら操作すればいい。 Super+Enter Launch Terminal などと表現されているが、ここでの Super キーとは Windows キー(あの窓のマーク)のことである。つまり、 Windows キーを押しながら Enter キーを押すことで端末エミュレータが起動する、ということである。このキー早見表は Super+?Win+Shift+/ )を押せばいつでもデスクトップに表示され、もう一度押せば消える。

以下基本的な操作について若干説明する(操作の詳細は後述)。

まず、 Super+Enter で端末を起動できる。もう一度 Super+Enter を押すと画面を縦に割るように右横へ新しい端末が起動する。さらに Super+Enter でもう一つが右に追加される。これで3つの端末が並んだろう。

次に Super+Backspace を押してから Super+Enter を押してみると、直前の端末の下に新しい端末が起動する。つまり Super+Backspace でウィンドウを作成する方角を切り替えるのである。もう一度 Super+Backspace を押してから Super+Enter を押すと、以下のような画面になるだろう。

regolith_linux_i3_st.jpg

右下のウィンドウがカレントになっているだろうが、これを1つ左の端末に切り替えたければ Super+← を押す。あるいは vi 風に Super+h でもいい。上のウィンドウに切り替えるには Super+↑ である。このように Super+カーソルキー でウィンドウの切り替えを行う。もっとも、マウスクリックでもウィンドウの切り替えはできるのだが。

次に i3-gaps ならではのお楽しみ、 Super+[+] を押すとウィンドウの隙間を広げてくれる。以下は2度ほど押してみた結果だ。逆に Super+[-] を押すと隙間を狭めてくれる。隙間をゼロにすることもできる。

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端末は exit コマンドや Ctrl+d で閉じられるが、 i3 では Super+Shift+q で何れのウィンドウも閉じることができる。

端末と同じくらいよく使うであろうウェブブラウザーは、 Super+Shift+Enter で起動できる。

その他のアプリケーションは Super+Space で表示されるランチャーから起動する。

また、システムの設定については Super+c で表示されるコントロールパネルから行う。

i3 セッションを終了させてログアウトするのは Super+Shift+e である。確認などなしでログアウトし、ディスプレイマネージャの画面になる。

なお、 OS の再起動やシャットダウンはログアウトした画面の右上にある電源ポタンを押し、出てきたダイアログの電源マークをクリックして行える。

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インストール後にやっておくこと

日本語環境にありがちな、インストール後にやっておいたほうがいいことをまとめた。もちろん、必ずやるべきということではないが。

日本語ディレクトリ名を英語にする

Ubuntu 日本語版のホームディレクトリ下には「ドキュメント」とか「デスクトップ」などといった日本語のユーザーディレクトリがあり、 Regolith Linux 日本語版でも同様である。GUI操作が主ならばさして問題にならないかもしれないが、コマンドラインを多用してパスを扱うとなればこれは結構不便なことである。なので最初のうちに解消しておきたい。

端末を起動( Super+Enter )し、以下を実行する。

$ LANG=C xdg-user-dirs-gtk-update

すると以下のようなダイアログが表示されるので、左下の [ Don’t ask me this again ] にチェックを入れ、右下の [ Update Names ] ボタンを押す。

regolith_linux_xdg_dirs.jpg

これでユーザーディレクトリ名が全て英語になる。

トレイアイコンを表示させる

Regolith Linux はトレイアイコンの表示が無効化されている。しかし日本語入力(後述)ではモード切り替えや設定をトレイアイコンから行うので、これが表示されないと不便である。そこでテキストエディター( Regolith Linux では nano 、 vi 、 gedit がインストール済み)で i3 の設定ファイル ~/.config/i3-regolith/config を開いて修正し、トレイアイコンが表示されるようにする。

まず Super+Enter で端末を開き、以下を実行する。

$ nano ~/.config/i3-regolith/config

そうしたら tray という文字を検索する。 nano での検索は Ctrl+w を押して検索文字列を入力し Enter

すると # Configure the bar とある箇所の5行ほど下でカーソルがとまる。そこに tray_output none と記されてあるのを、 tray_output primary と書き換える。

regolith_linux_i3_config_tray.jpg

書き換えたら保存して終了する。 nano では Ctrl+o を押して Enter で保存、 Ctrl+x で終了。 Ctrl+d を押せば端末も終了する。

そして最後に Super+Shift+r を押して、 i3 設定ファイルのリロードを行う。

ここでは見た目に変化はないだろうが、各アプリのトレイアイコンが起動すると、下端にあるバーの右端に表示されるようになる。

日本語を入力できるようにする

日本語でセットアップした Regolith Linux には既に iBus も Mozc 日本語入力もインストール済みである。ただし、Mozcが入力ソースとしてiBusに設定されていないので、これを設定して使えるようにする。

Super+c を押して設定パネルを開き、左列のカテゴリー一覧で [地域と言語] を選択する。そして [入力ソース] の下の方にある [+] ボタンを押すと追加候補のリストが現れるので、中から [日本語] を選ぶとさらにリストが現れる。その中から [日本語 (Mozc)] を選んで [追加] ボタンを押す。

regolith_linux_ibus_1.jpg

すると入力ソースに Mozc が追加され、右下に en (あるいは A× など)とアイコンが表示され、使えるようになる。

regolith_linux_ibus_2.jpg

なお、入力ソースの切り替えは Alt+Super+Backspace にあてられている。

US-ASCII での Mozc キーバインド

US-ASCII キーボードには半全キーなどがなく、日本語入力への切り替えが困難である。そこで私はキーボードから簡単に操作できるよう、以下のように「ことえり」のキー定義に Ctrl+\ でかなモードをトグルするように設定を加えている。

アイコンをクリックして [ツール] から [プロパティ] を選ぶと Mozc の設定パネルが開く。 [一般] タブの下の方、[キー設定] [キー設定の選択] プルダウンで「ことえり」 を選ぶ。

regolith_linux_mozc_1.jpg

その右横の [編集…] をクリックするとキー設定パネルが開く。

左下の [編集↓] ボタンから [エントリーを追加] を選び以下4つを追加する。

モード 入力キー コマンド
入力文字なし Ctrl\ IMEを無効化
直接入力 Ctrl\ IMEを有効化
変換中 Ctrl\ IMEを無効化
変換前入力中 Ctrl\ IMEを無効化

直接入力のみIMEを “有” 効化である。

regolith_linux_mozc_2.jpg

こうしておいて、まずはアイコンのメニューから Mozc の入力モードをひらがなに設定しておく。英数字を入力したいところでは Ctrl+\ を押して直接入力に切り替える。再び日本語入力が必要な時にはまた Ctrl+\ を押せばいい。また、ひらがなを打aった後で Ctrl+k を押すと文字がカタカナに変換される。

なお、この設定は Ubuntu に限らず、 iBus Mozc 全般で有効である。

なんと雑な設定だとお思いかも知れないが、ずっと iBus Mozc を使ってきてこれで困ったことは、あまりない。

Regolith Linux の操作

デスクトップに表示されるキー操作表には、ほぼ全ての操作が載っている。以下では順番を変え、また一部操作表にないものも含めて説明する。

起動、終了

操作キー 機能
Super+Enter 端末を起動
Super+Shift+Enter ウェブブラウザを起動
Super+Shift+q カレントウィンドウを消す
Super+Escape スクリーンロック
Super+Shift+s サスペンド
Super+Shift+e ログアウト
Super+Shift+/ キー割り当て表の表示/非表示

とても簡単に押せる Super+Enter で端末エミュレータが起動する。また Super+Shift+Enter では既定のウェブブラウザを起動する。 Ubuntu の標準ブラウザは Firefox である。

Super+Shift+q はどのウィンドウをも消すキーだ。 GUI ウィンドウマネージャの×ボタンのようでもある。

システム関連コマンドはスクリーンロック、サスペンド、ログアウトが用意されている。終了と再起動はログオフした画面(ディスプレイマネージャー)から行えるのだが、これらのコマンドは端末やコマンドランチャーから実行したっていい。ランチャーの項にて後述する。

端末( st )の操作

Super+Enter で起動する端末エミュレータは st(simple terminal) である。バックスクロールやフォントサイズの変更は以下の通り。テーマもダークかライトの切り替えが可能である。

Shift+PageUp バックスクロール
Shirt+Ctrl+PageUp フォントサイズを大きく
Shift+Ctrl+PageDown フォントサイズを小さく
F6 テーマ切り替え(ダーク or ライト)

バックスクロールは Shift+PageUp で開始し、以降 Shift+PageUpShift+PageDown でページスクロールする。他のキーを押せば元に戻る。

なお、端末を閉じるには exit コマンドを実行するか、プロンプトが空の状態で Ctrl+d を押す。終了できなくなった端末プロセスはとりあえず Super+Shift+q で閉じることができる。

ランチャーの操作

Regolith には3つのランチャー/スイッチャーメニューがある。

操作キー 機能
Super+Space アプリケーションランチャー
Super+Shift+Space コマンドランチャー
Super+Ctrl+Space ウィンドウスイッチャー

アプリケーションランチャーはパッケージインストールしたデスクトップアプリケーションを一覧から選んで起動する。

コマンドランチャーはデスクトップアプリの登録に関わらず、インストール済みのコマンドを一覧から選んで実行するためのものである。

ウィンドウスイッチャーは、起動中のウィンドウを選んで切り替える。ワークスペースを問わず、ユーザーセッション内で動作中のアプリのウィンドウを対象にする。

いずれも Rofi によるポップアップメニューで、文字を入力するごとに候補の絞り込みが行われる。メニューの主なキー操作は以下の通り。

操作キー 機能 他のキー
/ 選択カーソルを 下 / 上 へ Ctrl+n / Ctrl+p
Enter 実行 Ctrl+m Ctrl+j
Shift+Enter 端末で実行  
Ctrl+Enter コマンドラインを実行  
Ctrl+Space コマンドラインに複写  
Shift+Delete 履歴を1件削除  
Esc キャンセル Ctrl+[ Ctrl+g

基本的にはリストから項目をカーソルで選んで Enter で実行する。 Shift+Enter を使うとコマンドを端末上で実行してくれる。

また、リストから実行するには Enter でいいのだが、プロンプトに入力したコマンドラインの方を実行したい場合には Ctrl+Enter を使う。

コマンドランチャーでは引数つきでコマンドを実行できる。以降、その内容は履歴として記憶されリストに表示されるようになる。この履歴の削除は Shift+Delete で行う。なお、候補絞り込み中に Ctrl+Space を押すとリストの内容をプロンプトへ複写できる。

コマンドランチャーはシンプルなコマンドラインを扱う手軽な手段である。例えばログアウトするにはそのまま i3-msg exit と打ち込んで Enter (あるいは Ctrl+Enter )でいい。再起動や終了なんかも同様で、以下のようなコマンドで可能である。もちろん、端末から行ってもいい。

スクリーンロック gnome-screensaver-command --lock
サスペンド systemctl suspend
ログアウト i3-msg exit
再起動 reboot
終了 poweroff

ウィンドウの操作

操作キー 機能
Super+Shift+q ウィンドウを消す
Super+Backspace ウィンドウを作成する方向を切り替える
Super+f ウィンドウをフルスクリーン表示
Super+Shift+f ウィンドウをフローティング
Super+Shift+t フロートとタイルの選択をトグル
Super+[+] / [-] ウィンドウの隙間を広げる / 狭める
Super+h j k l 左 下 上 右 のウィンドウに切り替える
Super+Shift+h j k l 左 下 上 右 へウィンドウを入れ替える
Super+r ウィンドウリサイズモード

i3では、タイリングウィンドウに対してフローティングウィンドウという概念を設けており、これはタイルの枠に捕らわれない

フローティングウィンドウは Super キーを押しながらマウスでドラッグすることで移動できる。

ワークスペースの操作

ワークスペース機能はデスクトップを幾つも作ってそれらを切り替えながら使う仕組みである。

スタック型ウィンドウではウィンドウを切り替えることに主眼を置きやすいが、タイル型ウィンドウマネージャではワークスペースごと切り替えることもその特性上、非常に重要である。

関連するウィンドウを敷き詰めたデスクトップを幾つも作りそれらを切り替えながら使うようにすると、あたかも別々のアプリを一つの MDI (multi document interface) で扱うかのようになる。実際にやってみるとこれが結構合理的で便利である。

操作キー 機能
Super+10 ワークスペース 1 〜 10 に切り替え
Super+Ctrl+19 ワークスペース 11 〜 19 に切り替え
Super+Tab 次のワークスペースに切り替え
Super+Shift+Tab 直前のワークスペースに切り替え
Super+Shift+10 ウィンドウをワークスペース 1 〜 10 へ移動
Super+Shift+Ctrl+19 ウィンドウをワークスペース 11 〜 19 へ移動

ワークスペース 1〜10 への切り替えは Super+数字キー で行う。 Control キーを加えると 11〜19 を表示する。画面下端のバー左端から有効なワークスペース(ウィンドウが展開されているワークスペース)がカラーインデックスで表示される。ここはマウスクリックも受けつける。

公式では 10 個のワークスペースが使えるとしているが、

カレントのウィンドウを他のワークスペースに動かすには Shift キーを加えて

システム設定関連

操作キー 機能
Super+c コントロールパネル
Super+b Bluetooth の設定
Super+d ディスプレイの設定
Super+n ネットワークの設定
Super+p 電源の設定
Super+s サウンドの設定
Super+w Wifi の設定
Super+Shift+c i3設定ファイルをリロードする
Super+Shift+r i3をリスタート (レイアウトなどはそのまま)

Super+c で設定パネル GNOME Control Center を開く。設定のカテゴリーリストが左側に並ぶもので、ここから全ての設定が行えるが、そのうちネットワークや電源などの 6 つについては直接起動できるようにキーが当てられている。